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【新人OT・PT向け】呼吸の評価で見るところは3つ|胸郭・横隔膜の基礎とすぐ使える呼吸リハ

① この記事でわかること

  • 呼吸を見るときの3つのポイント(呼吸数・胸郭の動き・呼吸パターン)
  • 「数値」と「動き」をセットで見る理由と、すぐ報告したいサイン
  • 口すぼめ呼吸・胸郭ストレッチ・体位調整の基本と注意点

② 結論・全体像

結論:呼吸は「胸郭と横隔膜の動き」として見ると、整理しやすくなります。ただし、呼吸数やSpO2などの数値と、目で見る動きは必ずセットで確認します。

現役の作業療法士として病院で働いている私も、新人の頃は呼吸の評価が苦手でした。【ここに筆者の体験を一言:例「酸素や換気量など言葉ばかり追って、患者さんの胸を見ていなかった」など】

「酸素」「肺活量」「換気量」といった言葉は大切ですが、ベッドサイドでまず役立つのは、呼吸を“動き”として見る視点です。呼吸は次の流れで成り立っています。

  1. 胸郭(肋骨)が広がり、横隔膜が下がる
  2. 胸の中の空間が広がり、肺がいっしょにふくらむ
  3. 空気が入ってくる(吸気)

この記事では、評価を「呼吸数 → 胸郭の動き → 呼吸パターン」、介入を「口すぼめ呼吸 → 胸郭ストレッチ → 体位調整」の3つずつに絞って整理します。

③ 基礎:呼吸は「肺」ではなく「胸郭と横隔膜」が作る

肺は自分でふくらめない

肺には、自分をふくらませるための筋肉がありません。肺は胸膜という膜を介して胸郭の内側にぴったり沿っているため、胸郭が広がると肺もいっしょに引っぱられてふくらみます。つまり、呼吸を作っているのは胸郭と横隔膜の動きです。

横隔膜は吸気の主役

  • 吸うとき: 横隔膜が収縮して下がり、胸の中の空間が上下に広がります
  • 吐くとき(安静時): 横隔膜がゆるんで元の位置に戻り、肺が自分の弾力で自然に縮みます

つまり、安静時の「吐く」は、筋肉で押し出しているわけではありません。息を強く吐き出す必要があるのは、運動時や咳のとき、呼吸器疾患で息が吐ききれないときなどです。

胸郭は上と下で動き方が違う

  • 上部胸郭(おおむね上の方の肋骨): 主に前後に広がります(ポンプの取っ手のような動き)
  • 下部胸郭(おおむね下の方の肋骨): 主に左右に広がります(バケツの取っ手のような動き)

評価で手を当てる場所が変わるので、この違いだけ覚えておくと便利です。

動きが小さいと何が起こるか

横隔膜や胸郭の動きが小さいと、1回の呼吸で入る空気が減ります。体はそれを補うために、次のような反応をします。

  • 呼吸の回数を増やす
  • 首や肩の筋肉(補助呼吸筋)を使って息を吸う

これが続くと、疲れやすく効率の悪い呼吸になります。ただし、呼吸が速くなる原因は「動きの小ささ」だけではありません。次の評価で詳しく説明します。

④ 評価:数値と動きをセットで見る3ステップ

新人のうちは「呼吸数 → 胸郭の動き → 呼吸パターン」の順で見れば十分です。ただしその前に、カルテとバイタルで「今日リハビリをして大丈夫な状態か」を確認します。

ステップ0:まず全身状態を確認

  • カルテ:酸素の指示(安静時・運動時の流量)、安静度、医師の指示、前日からの変化
  • バイタル:SpO2、脈拍、血圧、体温
  • 見た目:顔色、唇の色、冷や汗、意識や反応の変化

ステップ1:呼吸数

いちばんシンプルで、状態の変化にも気づきやすい指標です。ただ、忙しいとSpO2だけ見て、呼吸数は数え忘れることがよくあります。私も【筆者の体験:例「最初の頃はパルスオキシメーターの数字ばかり見ていた」など】。

  • 目安: 成人の安静時でおおむね12〜20回/分
  • 数え方: 30秒数えて2倍、できれば1分間。呼吸は意識すると変わるので、脈を測るふりをしながら胸やお腹の動きを数えると自然です
  • 見るタイミング: 安静時、会話中、動作の直後、休憩後にどこまで戻るか

呼吸数が多いときは、「胸郭や横隔膜の動きが小さい」可能性もありますが、それだけではありません。低酸素、発熱・感染、心不全、痛み、不安などでも呼吸は速くなります。呼吸数の増加は、SpO2の低下より先に現れる状態悪化のサインともいわれます。いつもより明らかに多いときは、自己判断せず看護師や医師に共有しましょう。

ステップ2:胸郭の動き

  • 見る: 吸気で胸が広がるか、左右差はないか
  • 触る: 下部胸郭は、両手のひらを脇腹の少し上(肋骨の横)に軽く当て、吸気で手が外側へ広がるかを感じます。上部胸郭は、鎖骨の下に手を当て、前に持ち上がるかを確認します
  • 聞く: 「今の息苦しさは0〜10でどのくらいですか」と、修正ボルグスケールで数値にしておくと、介入前後の比較に使えます

正直なところ、最初は手を当てても動きの違いがよくわかりません。「広がっている気がする」くらいで止まってしまうのは、新人なら自然なことです。まずは左右を比べること、同じ患者様を何日か続けて触ることから始めると、少しずつ違いに気づけるようになります。

ステップ3:呼吸パターン

  • 肩が大きく上下していないか
  • 首の筋肉(胸鎖乳突筋・斜角筋)が吸気のたびに浮き出ていないか
  • 吸気でお腹がふくらんでいるか
  • 吐く時間が極端に長く、苦しそうではないか

特に注意したいのが、吸気でお腹がへこむ、胸とお腹の動きがバラバラといったパターン(奇異呼吸)です。横隔膜の疲労などのサインのことがあるため、見つけたらすぐに報告します。

ベッドサイド早見表

項目目安・見るところ気をつけたいサイン
呼吸数成人安静時 12〜20回/分安静時から多い、いつもより明らかに増えた、休憩しても戻らない
SpO2一般に90%以上が目安(医師の指示値を優先)指示値を下回る、動作後に戻りにくい
胸郭の動き上部は前後、下部は左右に広がる左右差が大きい、ほとんど動かない
呼吸パターン吸気でお腹がふくらむ肩で息をする、吸気でお腹がへこむ
息苦しさ修正ボルグスケール(0〜10)会話が途切れる、急に強くなった
見た目顔色・唇の色・表情チアノーゼ、冷や汗、意識や反応の変化

数値はあくまで目安です。COPDなどで二酸化炭素がたまりやすい方は、医師がSpO2の目標を低め(88〜92%など)に設定していることがあります。中止や報告の基準は施設や患者様ごとに決まっているので、必ず確認してください。「こんなことで報告していいのかな」と迷う場面は、経験を重ねても出てきます。新人のうちは、迷ったら「中断して報告」で大丈夫です。

⑤ 治療:新人がまず使いこなしたい3つ

どれも道具なしで、ベッドサイドですぐに試せます。

口すぼめ呼吸

呼吸リハで最初に覚えたい方法です。

  1. 鼻からゆっくり息を吸う
  2. 口を軽くすぼめ、ろうそくの火をゆらす程度の強さで、ゆっくり吐く
  3. 吐く時間は、吸う時間の2〜3倍くらいが目安

なぜ効くのか: すぼめた口が小さな抵抗になり、気道の内側の圧が保たれます。その結果、細い気道がつぶれにくくなり、息を吐ききりやすくなります。COPDの方によく使われ、呼吸のリズムが整い、呼吸数が落ち着くことが期待できます。

注意点:

  • 強く吐きすぎない(お腹に力を入れて絞り出すと、かえって苦しくなります)
  • セラピストが一緒にやって見せると伝わりやすいです
  • 説明しても伝わらず、力いっぱい吐いてしまう方もいます。うまくいかない日があっても当然なので、無理強いはしません。高齢の方や神経疾患の方にも応用されますが、効果には個人差があります

胸郭ストレッチ

胸郭が硬いと、いくら呼吸を意識しても動きが出ません。

  • 吸気に合わせて、下部胸郭に当てた手で外側への広がりを軽く誘導する
  • 側臥位で上側の腕を頭の方へ上げ、体の横を伸ばしながら深呼吸する
  • 座位で体をひねる・横に倒す動きに、呼吸を合わせる

伸ばす動きと呼吸のタイミングを合わせるのがコツです。

注意点: 骨粗しょう症が強い方、肋骨骨折や胸部の手術後、痛みがある方には強い力をかけません。必ず痛みのない範囲で行い、気になる既往があれば事前にカルテや医師に確認します。

体位調整

姿勢を変えるだけで、呼吸が楽になるケースは多いです。

  • 前傾座位(テーブルに肘をつく、膝に手を置く): お腹の内臓が横隔膜を下から支えて、横隔膜が力を出しやすい形になります。腕を支えると、胸の筋肉も呼吸を手伝いやすくなります
  • 上体を起こした姿勢(ファーラー位・座位): 横になると息苦しくなる方、特に心不全の方では上体を起こすと楽になることがあります

苦しそうなときは、訓練を進める前に、まず姿勢を整える。それも立派な介入のひとつです。

⑥ 現場の実例:歩行後に息切れが強い高齢の方

※個人が特定されないよう、内容を一部変えています。数値は一例です。

場面: 80代、肺炎の治療後で体力が落ちている方。病棟の廊下を歩いたあと、強い息切れが出ました。

評価(歩行直後)

  • 呼吸数:28回/分(安静時は18回/分)
  • SpO2:92%(安静時は95%、医師の指示値は90%以上)
  • 肩で息をしていて、下部胸郭の広がりが小さい
  • 修正ボルグスケール:5(強い)

対応

  1. すぐに椅子に座ってもらい、テーブルに肘をつく前傾座位に
  2. 「一緒にやりましょう」と声をかけ、セラピストも口すぼめ呼吸をして見せる
  3. 下部胸郭に手を添え、吸気で外側へ広がるよう軽く誘導

再評価(約3〜5分後)

  • 呼吸数:20回/分前後、SpO2:95%、修正ボルグスケール:2

次回への工夫

  • 歩行距離を区切り、休憩の場所をあらかじめ決めておく
  • 休憩中に本人が自分で前傾座位と口すぼめ呼吸をできるよう練習する

もし休憩しても数値や息苦しさが戻らない場合は、訓練を中止して看護師に報告します。うまくいった日も、いかなかった日も、評価 → 介入 → 再評価の流れを毎回くり返すことが、観察の目を育ててくれます。

⑦ 新人が見落としやすいポイント

よくあるミス対策
数値だけ、または動きだけを見る呼吸数・SpO2と、胸郭・呼吸パターンをセットで見る
呼吸が速い理由を「動きが小さいから」と決めつける感染や心不全などの可能性もあると考え、いつもと違えば報告する
酸素の指示を確認せずに始める安静時と運動時の流量指示をカルテで確認してから始める
いきなり難しい呼吸訓練を選ぶ口すぼめ呼吸と体位調整からで十分
臥位だけで終わる座位や前傾座位など、楽な姿勢を積極的に使う
報告するか迷って、様子を見てしまう「いつもと違う」は報告の理由として十分。迷ったら共有する
介入後に再評価しない同じ項目(呼吸数・SpO2・ボルグ)で前後を比べ、記録に残す

再評価は、時間に追われると後回しになりがちです。【筆者の体験:例「次の患者さんの時間が迫って、つい記録だけで済ませてしまった」など】。介入前後の数値を残しておくと、多職種へ報告するときの説得力が変わります。

⑧ まとめ

  • 呼吸は肺ではなく、胸郭と横隔膜の動きが作っている
  • 評価は「呼吸数 → 胸郭の動き → 呼吸パターン」。数値と動きは必ずセットで見る
  • 介入は口すぼめ呼吸・胸郭ストレッチ・体位調整が基本。介入後は必ず再評価する

⑨ すぐ現場で使えるコツ

苦しそうなときは「前傾座位+口すぼめ呼吸」。そして数分後に、もう一度呼吸数を数える。

これで呼吸が落ち着く方は少なくありません。数値が良くなれば、患者様にとっても「こうすれば楽になる」という自信になります。反対に、落ち着かないときは無理に続けず報告することも、大事な判断のひとつです。

参考資料

  • 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会ほか「呼吸リハビリテーションに関するステートメント」(2018年)
  • 日本リハビリテーション医学会「リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドライン 第2版」(2018年)
  • 日本呼吸器学会「COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン」最新版

免責事項

本ブログは、新人教育や知識整理を目的とした情報発信です。所属施設とは無関係であり、筆者の臨床経験および一般的な参考資料をもとにまとめています。実際の診療・臨床判断は、患者様の状態や各施設の方針・最新文献に基づき、担当スタッフの判断を優先してください。

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